masamasa1985’s diary

元料理人の和包丁ファンによる堺和包丁のウンチクを語ります。

堺の和包丁とその他の和包丁の決定的違いとは…

  

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日本には各地に有名な刃物の産地が存在します。

 

土佐、案来、燕三条など多数ありますが、

和包丁に関してはやはりトップシェアを誇る

で製造されたものが品質が高いです。

 

堺打刃物の歴史

 

堺打刃物の歴史は日本で最も古く、

その起源は古墳時代にまで遡ります。

 

古墳時代(5世紀頃)に大仙陵古墳

現在の大阪堺の地に築造されたとされています。

 

この大仙(仁徳天皇)陵古墳は

クフ王ピラミッド、始皇帝墓陵と並ぶ

世界3代墳墓と称されており、

墳丘長は約486mにも及ぶ前方後円墳です。

 

この巨大古墳を築造するために大量の

鋤や鍬が必要とされたため、

当時、日本中から堺の地に鍛冶職人が

集められたと伝えられています。

 

それが起源となり、

堺の地でハイレベルな鍛冶技術が

研鑽されていくこととなります。

 

戦国時代には日本有数の火縄銃の産地となり、

織田信長からも格別に引き立てられたそうです。

 

 江戸時代になるとタバコが流行し、

タバコの葉を刻むための包丁を

堺の職人たちが製造し始めました。

 

堺製のタバコ包丁の抜群の切れ味と

刃持ちの良さは江戸幕府から専売品として

堺極が附され全国に販売されるに至りました。

 

商人たちで賑わう大阪の地では

食の多様化に伴い、料理用の包丁も

時の流れと共に種類が豊富になっていきました。

 

堺打刃物だけの独自の和包丁製造工程

 

その過程で堺打刃物は分業制の形態となっていきます。

 

大きく分けて、

鍛冶、刃付け、付け、

それぞれに専門の職人が存在します。

 

一本の包丁を仕上げるための各工程ごとに

専門技術を極めし職人が魂を込めます。

 

一本の包丁を製造するすべての工程を

1人の職人が行う場合、鍛冶、刃付け、

柄付けのすべての技術を研鑽していく

必要があります。

 

要するに、各工程の技術を磨くために

費やせる時間が少なくとも3分の1になる

ということです。

 

体操競技に例えるとすれば、

オールラウンダー1人の全種目の総合得点よりも

種目ごとのスペシャリストが出した点数を

足した場合の方が高得点になるのと似ています。

 

学校のテストとは異なり、

技術の向上、研鑽には終わりはありません。

 

職人の腕は商品として販売しても

問題ないレベルに到達した後も

磨き続けられていきます。

 

堺の和包丁が世界中で圧倒的シェアを誇る所以

 

堺で生産された和包丁が他より圧倒的に

高品質なのは、各工程にそれぞれの

スペシャリストが存在しているからです。

 

そこには商品としてお金を払ってもらえる

水準を大きく超越した専門の職人たちの

卓越した技術レベルの見事な調和が感じられます。

 

堺の和包丁とその他の産地の和包丁との

決定的な違いは分業制によるすべての

工程での比類なき技術レベルの掛け算。

 

その一つ一つはほんの僅かな微差かもしれません。

 

しかし、

 

各工程で生じたその微差が

一本の包丁に掛け算として集結した場合、

それは他の追随を決して許さない

圧倒的な差となって現れる。

 

その結果、堺の和包丁が世界的に

トップシェアを獲得している。

 

だと感じています。